丹羽 優太 | YUTA NIWA SOLO EXHIBITION 「PAINT IT BLACK」

2021.02.26 – 2021.03.21

丹羽 優太 | YUTA NIWA  SOLO EXHIBITION 「PAINT IT BLACK」

「波濤鯢図」 S5号 本鳥の子紙、墨、顔料

ARTDYNEでは2021年2月26日(金)から3月21日(日)まで、丹羽優太の個展「PAINT IT BLACK」を開催いたします。丹羽はいわゆる「日本画」としての岩絵具や和紙、墨を使用しますが、「見立て」の手法を使う、明治以前の日本の正当な美術の系譜に連なるアーティストとして位置付けられます。

「見立て」は日本の芸術、文化において独特の発展を遂げた表現手法であり、古事記のイザナギ・イザナミの国生み神話における「其の島に天降りまして、天之御柱に見立て」という記述に見られるように、日本文化の多くの根底に存在する意識の流れでもあります。古くからある対象を他のものに例える表現がナチュラルに行われ共有化され、実物を見たことのない人でも想像で楽しめるような趣向が時代ごとに試みられてきました。

日本の岐阜以西にしか生息しない天然記念物、大山椒魚(オオサンショウウオ)は、神奈川県出身の丹羽が「見立て」として取り上げた題材のひとつです。9年前に京都に移り住み、初めて目にした大山椒魚を、江戸時代の絵師たちが麒麟や虎、象や鯨など、彼らが見たことの無い瑞獣や生き物を伝聞から想像力を駆使して描いたように、丹羽は未知の世界から湧き上がる異形として捉え、リアリティと共に底知れぬ力をたたえた圧倒的な存在として描写します。

巨大な土塊のような大山椒魚、大鯰など、丹羽が取り組む水生生物は日本文化とのかかわりが深く、地震・津波・洪水のような大災害をもたらす存在として、畏怖の対象であると同時に神の化身として畏れられ、祀られてきました。彼らは言うなれば厄災の「見立て」としての象徴的な存在ではありますが、丹羽の描くそれらは、どこか可笑しみを感じさせる親密さを持ち合わせています。その親密性は彼が描く人々の姿にも通じ、鳥獣人物戯画や歌川国芳の浮世絵の様な諧謔的要素を色濃く滲ませつつ、天変地異や疫病のような厄災になすすべもなく流されていく人間の弱さと、温かみやユーモアを失うことのない逞しさを生き生きと表現しています。それはまさに今日の私たちが暮らす社会の様相であり、歴史が移っても変わることのない普遍性を画面に描こうとする丹羽の姿勢をここに読み取ることが出来ます。

今展では大鯰、大山椒魚をモチーフとした作品の他、新しい試みとして、葛飾北斎が描いた有名な艶本「喜能会之故真通(きのえのこまつ)」の中の一枚、「蛸と海女」から引用した大作および、陶芸作品を発表いたします。コマーシャルギャラリーでは初の開催となる丹羽優太の新作個展にどうぞご期待ください。

※本展につきましては、新型コロナウィルス感染拡大状況によっては会期等が変更になる可能性がございます。 最新情報は弊社ギャラリーウェブサイト、各SNSにて 随時配信して参りますので、そちらをあわせてご確認ください。

作家略歴

1993

神奈川県生まれ

2013

京都造形芸術大学美術工芸学科日本画コース入学

2015

ジュネーヴ造形芸術大学交換留学

2017

京都造形芸術大学美術工芸学科日本画コース卒業

2019

京都造形芸術大学大学院芸術研究科芸術専攻ペインティング領域修了

現在、京都を拠点として制作活動中。

ULUTRA SANDWHICH PROJECT 9期生
クマ財団奨学生第2期・第3期生

グループ展

2021

やんばるアートフェスティバル -山原知新-(大宜味村立旧塩屋小学校/沖縄)

2019

KUAD ANNUAL2019-宇宙船地球号-(東京都現代美術館/東京)
KUMA EXHIBITION 2019(スパイラルガーデン/東京)
アートアワード丸の内2019 (新東京ビルヂング/東京)

2018

京都府新鋭選抜展(京都府文化博物館/京都)

2017

アートアワード丸の内2017(新東京ビルヂング/東京)
DEP/ART KYOTO(大丸百貨店/京都)

2016

画心展(佐藤美術館/東京、‘16~’18)

受賞歴

2019

京都造形芸術大学修了作品展 大学院賞
アートアワード丸の内2019 ゲスト審査員賞

2018

京都府新鋭選抜展 朝日新聞社賞

2017

アートアワード丸の内2017 入選

アーティスト・ステートメント

幕末に頻繁に描かれた鯰絵は、大鯰が暴れて地震が起きたという話が元となったもの。それらは地震への怒りや恐れだけではなく、地震がもたらす大きな力が今の苦境を変えてくれるという希望が込められたものもある。近年も幕末と同じく、多くの災害が猛威を振るい、いまも疫病が収まる気配はない。見えないものへ恐怖は、人々の頭の中で大きくなり、時代に大きくのしかかる。そんな時代にはいつも黒い何かが現れる。鯰をはじめ、大山椒魚や蛇など身近にいる黒く大きな生き物が災害や疫病の原因とされてきた。彼らはなぜ現れ、何を伝えたいのか。黒い彼らが、世界を黒く塗りつぶした時、そこに何が残るのだろうか。