髙木優希個展「あかるいへや」

2023.02.04 – 2023.02.26

髙木優希個展「あかるいへや」

この度、ARTDYNEはアーツ千代田3331における移転前の最後の企画展、髙木優希個展「あかるいへや」を開催いたします。

髙木優希は2021年に東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業後、現在、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程に在籍中です。

髙木は実在する光景を他人から画像で受取り、それを見ながらマケットを構築、さまざまな光をあてながら写真に切り取った後、油彩画に起こすという複雑な制作工程をとります。複数のプロセスを経て実体から僅かずつずらされ切り取られた作品は、真実でもあり虚偽でもあるという二面性を持ち、さらに目に見えない不穏な気配、また時間や空間の実在への問いが織り込まれています。すべては髙木の高い描写技術によって成り立っており、リアルとアンリアルが共存する不可思議な経験を見る者に与えます。

今回の展覧会タイトルは、ロラン・バルトの名著「明るい部屋」からきています。髙木の作品は、絵画と写真の関係性から言及することが可能であり、彼女の作品はバルトの言う写真の特徴的な性質、「怖さ」と「イメージ」を有しているほか、多くの共通点が見られます。特に写真の本質、<それは、かつて、あった>という一文は、髙木作品の本質そのものであり、今後の考察が待たれます。

終わらない戦争と疫病、そしてデマゴキーの蔓延する世界。すでにAIの普及で<それは、かつて、あった>という実在性すら危ぶまれています。何が虚構で何が現実なのか、見定めようとすればするほど迷路に入り込む現代社会において、絵画の役割を今一度見直す機会となれば幸いです。

 

■アーティスト・ステートメント

私は、制作する上で3つのプロセスを踏んでいる。

まず、他人の部屋の写真を元にスチレンボードや紙粘土を使った模型を作ること。これは、実在する部屋に存在する生活感や人が住んでいた痕跡を可能な限り排除してフィクションの世界を作るため。

次に、作った模型にさまざまな光を当て写真を撮ること。これは、誰も住み得ないただのチープな模型から人の気配を探し、存在しない何かを可視化するため。

最後に、その写真を絵画に描き換えること。

この三つのプロセスを経て、何も存在しないはずの空間に在る不思議で違和感のある「何か」を示唆することが私の制作の軸になっている。たとえば、ホラー映画において幽霊が画面上に存在していないのに強く恐怖を感じるように。または、部屋に一人でいるときに背後に気配を感じ思わず振り返ってしまう時のように、私の作品の中に在る目に見えない「何か」の気配を感じ取って欲しい。

髙木優希

作家略歴

髙木優希|Yuki Takagi

1994年

福島県生まれ

2021年

東京芸術大学絵画科油画専攻卒業

現在、東京藝術大学大学院 美術研究科 修士課程在籍中

個展

2021年

「ゆうれいのいないところで」ARTDYNE/東京

2020年

「あの日のすみか」MEDEL GALLERY SHU/東京

主なグループ展

2022年

「鳥はいまどこを飛ぶか」プライベイト/東京

2021年

「3331ART FAIR 2021」ARTDYNE/東京

2020年

「Spring Show」ARTDYNE/東京

2019年

「上書きされた風景」MEDEL GALLERY SHU/東京
開廊記念2人展「尾黒久美・髙木優希展」/ARTDYNE/東京

2018年

「東京インディペンデント」/東京藝術大学陳列館/東京
「ゆがいたかいがおいしい?」/gallery i/東京