髙木優希個展|静かな誤訳
髙木優希個展「静かな誤訳」
2025.06.21 – 2025.07.06
12:00-19:00 月・火・水 休廊
オープニングパーティー
6月21日(土)18-20時

この度、ARTDYNEでは髙木優希の個展「静かな誤訳」を2025年6月21日(土)- 7月6日(日)の期間に開催いたします。
髙木優希は1994年福島生まれ。2021年に東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業後、2024年3月に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程を修了。現在は東京を拠点として制作を行っています。
髙木は、他人の部屋の写真をもとにスチレンボードや紙粘土で模型を制作し、そこに光を当てて撮影したイメージをさらに絵画へと描き起こすという多層的な制作段階を通じて、絵画空間に漂う「気配」や「違和感」をすくい上げてきました。写真、模型、撮影、そして絵画──幾層もの媒介を経て立ち上がる髙木の作品は、現実と虚構、知覚と記憶の裂け目にそっと差し込まれた楔のように、私たちの「見る」行為を揺さぶります。
他者の部屋という私的な記録から始まるそのプロセスは、あらゆる痕跡を削ぎ落とした模型制作と再撮影という儀式的手順を経たのちに絵画として再構築されます。その画面においては、物理的な空間の再現ではなく、「存在していたかもしれない何か」の記憶が、まるで亡霊のように出現します。髙木の行う「誤訳」は、単なる再現のずれでだけではなく、見る者の無意識と共鳴しながら、見えない気配や不在のリアリティを伝える詩的な手段でもあります。空虚の中に潜む感覚、沈黙のなかに宿る余白。今展を通して、視覚と感覚のあいだに生まれる静かな揺らぎを体感いただければ幸いです。
初日、6月21日(土)18-20時にオープニングパーティーを開催いたします。
どなたでもご参加いただけますのでぜひお越しください。
【アーティスト・ステートメント】
私は、制作する上で3つのプロセスを踏んでいる。
まず、他人の部屋の写真を元にスチレンボードや紙粘土を使った模型を作ること。これは、実在する部屋に存在する生活感や人が住んでいた痕跡を可能な限り排除してフィクションの世界を作るため。
次に、作った模型にさまざまな光を当て写真を撮ること。これは、誰も住み得ないただのチープな模型から人の気配を探し、存在しない何かを可視化するため。
最後に、その写真を絵画に描き換えること。
この三つのプロセスを経て、何も存在しないはずの空間に在る不思議で違和感のある「何か」を示唆することが私の制作の軸になっている。たとえば、ホラー映画において幽霊が画面上に存在していないのに強く恐怖を感じるように。または、部屋に一人でいるときに背後に気配を感じ思わず振り返ってしまう時のように。私の作品の中に在る目に見えない「何か」の気配を感じ取って欲しい。
髙木優希
髙木優希|Yuki Takagi 略歴

1994年
福島県生まれ
2021年
東京芸術大学絵画科油画専攻卒業
2024年
東京藝術大学大学院 美術研究科 修士課程 修了
現在、東京を拠点に活動。
個展
2024年
「常夜灯」ARTDYNE/東京
2023年
「あかるいへや」ARTDYNE/東京
2021年
「ゆうれいのいないところで」ARTDYNE/東京
2020年
「あの日のすみか」MEDEL GALLERY SHU/東京
グループ展
2025年
「VOCA展2025 現代美術の展望 —新しい平面の作家たち—」上野の森美術館/東京
2023年
「INNOCENT ROOMS」ギャラリー・アートアンリミテッド/東京
2022年
「鳥はいまどこを飛ぶか」プライベイト/東京
2021年
「3331 ART FAIR 2021」ARTDYNE/東京
2020年
「Spring Show」ARTDYNE/東京
2019年
「上書きされた風景」MEDEL GALLERY SHU/東京
開廊記念2人展「尾黒久美・髙木優希展」/ARTDYNE/東京
2018年
「東京インディペンデント」/東京藝術大学陳列館/東京
「ゆがいたかいがおいしい?」/gallery i /東京
受賞
2025年
「VOCA展2025 現代美術の展望 —新しい平面の作家たち—」大原美術館賞